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今年のみゆきはよいみゆき(2)「親愛なるみゆきへ」 |
放送局
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FM東京
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提 供
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TDK
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放送日
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1985年12月14日(土)
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時 間
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15:00-15:55(54:30)
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案 内
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朝丘直美
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出 演
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中島みゆき
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♪:楽曲
◆:トーク
●:MCほか
□:CM
*:不明
Tr. |
Title |
Time |
07 |
● |
証言(1):武田鉄矢 |
03:56 |
武田
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「こんにちは、武田鉄矢です。ミュージシャンという言葉が、とても心地よく耳の中にスッと入ってくるわけでありますね。耳の中に入ってきて、スッと抜ける感じで、中島みゆきっていう、この名前も、何か耳の中にスッと入っていくんですね。これ、やっぱり、親が付けた名前の美しさでありますですね。中島みゆき。素晴らしい名前だというふうに思いますですね。何だか、こう、エエとこのお嬢ちゃんが、ポシェット、ブラさげて、何か、不二屋のミルキー持って歩いてるみたいな、そんな風情でございますですねえ。この名前の甘さとは、裏腹に、歌が非常に、こう、辛らつでハード。で、その唄う声そのものが、非常に虚無的を装いながら、人に訴えかけようという、高等手段を用いてらっしゃいますから、彼女の持ってる世界というのは、深みとか、広がりが出てくるような気がいたします。
武田鉄矢。ボードビリアン。耳にガンガン引っ掛かって、もう、“冗談やらなきゃただおかねえ”ってそういう感じになってしまうわけでありますですねえ(笑)。
中島さんの、僕は、歌の中で、一番好きなのは。大したもんだなあと思いましたのは、『世情』という歌ですね。これちょっと思い出がありまして、3年B組金八先生、校内暴力の嵐という巻をお送りしたときに、若手ディレクターが、この中島さんの『世情』というのを、警察に捕まって補導された少年達の映像に被せたんですね。これが、もう抜群の効果でしてねえ。思わず、自分も出てるんですけども、その中島さんの歌が流れた部分だけ、まるでイタリア映画『ひまわり』を観ているような、とても深い、味わいのある画面に出来上がったので、この歌を特によく憶えております。これは、もちろん、画面のパワーもそうですけども、中島さんの歌の奥行きがそうさせたのじゃないかなあと思います。少年達を乗っけました護送車が下町の道路に消えていく、その時に彼女の冷たい、どこか渇いた、それでもまだ諦めずに引っ掛かって訴えようとする歌声が、綺麗に流れてきた時に、ホントにそれは美しい、素晴らしい画面になったというふうに、今でも記憶..新鮮に憶えております。
“シュプレヒコールの波...
...学者は世間を見たような気になる”
こういう一見、ハードな言葉が、彼女の唇と舌によりまして、オブラートに包まれて、それが乾ききったメロディに乗っかったときに、何だか奇妙な空間を、中島みゆきさんの世界を広げてるのではなかろうかと、いたく感服したしました。もちろん、僕よりずいぶん年の若い女性でありますけれども、ホントにしたたかに、深く世間を見ているなあと、心から尊敬しております。これが中島さんに対する褒め言葉です。
あんまり好きじゃない所は、泣きながら失恋の歌を唄われるみゆきさんていうのは、あんまり好きじゃありませんで。そういう歌を夜中に聴いて、ほんとにもう、気が滅入ったことがありますけども。みゆきさんの声というのは、激情むき出しでは、何だか辛過ぎるって気がするんですね。泣きながらお唄いになりますと、あのラヴソングも素晴らしゅうございましたけども。夜中に聴いておりますと、何だか、女の人の切々たる恨み。“慰謝料をくれ。私をおもちゃにしたのね”と。そういう言葉に聴こえて仕方がないんでありますね。同じ声を昔聴いたことがある。“おもちゃにしたのね、あたしのことを”っていうのがですね。灯りの消えた四畳半で聴いたことがありまして。その思い出と被さりましてゾーっとするわけでございますですね。
何だか非常にクールに、是非、見て欲しいなと。男と女に関しても、世間に関しましても。それが、やっぱり、この中島みゆきという名前。そして、その世界を膨らませる素晴らしい力になるんではなかろうかと思います。
健闘を祈ります。武田鉄矢でございました」
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毎回1人のアーティストが1ヶ月(4週)にわたってDJをつとめる音楽番組。第2日目は、「親愛なるみゆきへ」と題し、様々な世界で活躍する人達の中島みゆきへのメッセージを紹介する
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