Tr. |
Title |
Time |
13 |
◆ |
“タコス”と“タコ酢” |
04:49 |
大伴
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「今夜のテーマの“音感人間”という言葉が浮かんだのはこの曲(『C.Q.』)なんですね。やっぱり」
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中島
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「そうですか」
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大伴
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「ああ、やっぱり音でバッと抱き込んでしまうというか、もろ差しになってダダッと来るっていうか、そういう感じがするんで。で、こういったテクノな音をみゆきさんが使うっていうことは、ある意味でリスナーには非常に驚きの部分も多いと思うんですね。電子楽器なんかを使うってことにためらいっていうのは無かったんでしょうか?」
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中島
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「うん。無いですね。その世界が見えれば道具は何でも良いと思ってるんですね、あたしは。で、伝えたいことが、もし...私は言葉っていうのがすごく好きでやってるわけで、その為に言葉を使って言葉を表すことが最善だったらそれもトライするけれども、もしかしたら、言葉を使わないことによって言葉が伝わることもあるわけでね。逆説的な言い方ですけれども。そういうことも無視したくはないって考えた時に、あたしにとって、いわゆるサウンドと言われるものであったり。時にはサウンドでは無い。それはただのSEだと言われるものであったとしても。コンピューターの音であっても。実際の犬が吠える声であっても。言いたいことに近ければ何でも使いたいと思ってる。実際の風の音が私の言いたいことに合うなら実際を使うし。それよりも、もっと風の音に聴こえる電気的な音があると私が感じたらそれを使えば良いし。そのへんはエエかげんというか、まぁそういうようなもんなんですけどね(笑)。道具は何でも良いと思ってます」
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大伴
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「ふ〜ん。じゃあ、道具は何でも良いけれど、バックに流れているいろんな楽器とかですね。それからアコースティックな楽器。それから電子楽器っていったようなこだわりは無いけれど。でもそれは、言葉を中心にして、何か、こう、立体みたいに出来上がっているっていうか、そういったイメージが最初にあるんでしょうね?」
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中島
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「ありますね。私がこの曲(『C.Q.』)のアレンジを瀬尾さんにお願いしたときには、何にもない空間を音で表してくださいって言ったんですよね」
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大伴
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「何にもない空間?」
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中島
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「うん。何にもない星空みたいなものをね。星も良く見えないような。真空状態に近いような宇宙空間。手伸ばしてもどこまでも広がっていくかもしれないような。“無”を音で表してくださいっていうふうなね。“無”の音を“有”で出してくれるという。さぁ何やるかなと思って楽しみにしてたら、これが出てきたんですけどね(笑)」
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大伴
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「もう“ムー”としか言いようがないですが(笑)。そのへん心に秘めてもう一回聴きたいと思いますが」
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中島
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「あたし、そのへんがね、いつもアレンジャーとかいろんな人に頼むときに、非常に抽象的なものの言い方するんですよ。“無”を表してくださいとか。だから、そういうふうな言われ方をすると仕事がやりづらいという人とは、結局、組めないっていうことになっちゃうんですよね。だから、その点じゃ、あまりアカデミックに音楽的では無いとは思いますけど」
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大伴
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「実は、昨年の秋にですね。ちょうどこの『歌でしか言えない』のアルバムが出る頃に、初めてインタビューさせて頂いたんですけれども。その時に最も印象的だった言葉は、僕が“アレンジャーの方にみゆきさんはどういった指示を、あるいは、注文を、どういった言葉で出されるんですか?”って訊いたら。今、仰ったようなことをいろいろ話してくださって。それから“タコスとタコ・スの違いを注文したりはするわよ”って仰ったんですよね(笑)。ああ“タコス”の音と“タコ酢”の音。なるほどなぁっと思ったんですが。私、活字の仕事で。雑誌メディアの仕事でインタビューに行って。“タコス”と“タコ・ス”というのはですね、文字で表現するのが、結構、写植屋さんが大変で。僕が原稿書く以前に写植屋さんは大変だろうなぁと思ったのを憶えてるんですが(笑)」
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中島
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「そうですよねぇ」
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大伴
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「抽象的な言葉っていうのは、例えばそういった言葉ですよね?」
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中島
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「そうです。それでこそ『歌でしか言えない』ちゅうもんですよね(笑)」
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