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05 |
◆ |
谷川俊太郎「私が歌う理由」 |
03:09 |
大伴
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「その時、谷川俊太郎さんが課題曲『私が歌う理由(わけ)』ってものを出してですね。それを、みゆきさんが真剣に受け止めてデビューを思い留まったっていう風な逸話が残ってるんです。これホントなんですか?」
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中島
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「はい。あの時のフォーク音楽祭にこの『あたし時々おもうの』で出て、谷川俊太郎さんの詩と会わなかったら、あのまんまコレでデビューしてたかもしれないんですよ。
で、この曲を提げて全国大会まで出場が決まって。出場が決まった段階で課題詩というのが出されるんですね。で、結局、自分のオリジナルと2曲持って参加しなきゃなんないんですよ。
で、全国の各地区の人達が一斉にある日突然渡されまして。そん時に私はもう舞い上がってましてね。
この『あたし時々おもうの』で、“あたしは凄いんだ” みたいな(笑)
“これでデビューは確実よ” みたいな。偉くなっちゃってる訳ですよ。
ほんで、舞い上がってる所へ出されたタイトルが『私が歌う理由』、凄い根源的なタイトルだったんですよね」
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大伴
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「アイデンティティーをそのままズバリ言ったようなタイトルですね」
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中島
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「何んか、舞い上がって、足元ふわふわになっちゃってて。
“わたしはー、もう全国大会に出るんだからー、偉いんだからー、スターなんだからー” みたいに思ってたら足元をスカッとさらわれたような気がしたの。
“歌う理由(わけ)は何ですか?” と訊かれたようなね。カーっと思っちゃって。“何で歌ってるんだっけ?” と思って。“賞が欲しくて歌ってるんだっけ?” と思って。もう一回、頭っから考え直さないとコレ、何か、危ないんじゃないかな?と思って。
で、一応、この曲で、迷いながらも『あたし時々おもうの』で賞は貰えちゃったんですけども。で、デビューの話があったんですけれども、“ちょっともう一回最初から考え直してみます” って、田舎戻っちゃったんです」
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大伴
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「現在としては、それはもう冷静に語れることだと思うんですけれど。今の今までコレをレコード化されなかったっていうのは、やっぱりそれは強烈な思い出だったっていうか、ショックなことだったわけですよね?」
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中島
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「そうですね。言ってみれば自分のスゴくこの、愚かな部分がね、自分に蘇りますからね」
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大伴
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「最近そこまで考えてデビューを思い留まるアーティストがいるかどうか、ちょっと疑問ですが(笑)」
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中島
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「いやいや(笑)」
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大伴
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「僕は、いい話伺ったという気がします」
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